町に賑わいを!思いを一つにさらに前へ
宮城県の北東部に位置する南三陸町。沿岸部のリアス式海岸が、三陸復興国立公園の一角を形成するなどの海山が一体となった自然豊かな町です。東日本大震災では、津波などにより壊滅的な被害を受けました。震災から6年が経過し、町の復興は着実に進んでいます。一方で、人口減少が深刻化し、町の賑わいを取り戻すことが大きな課題となっています。
地域の盛り上げを目的に、「南三陸の食を通して幸せを届ける」をキーワードに活動する「南三陸おふくろの味研究会」、中心市街地創出の拠点として新しく生まれ変わった「南三陸さんさん商店街」の皆さんの、新しい町づくりにかける思いをレポートしました。
「南三陸おふくろの味研究会」が届けたいもの
2014年8月に、宮城県漁協志津川支所の女性が中心となって結成された「南三陸おふくろの味研究会」。志津川湾で水揚げされたばかりの新鮮なカキやタコ、ホヤを素材に商品化した「手作り缶詰」は、地元のさんさん商店街をはじめ、仙台や東京などに流通し、現在は全国展開を目指しています。特に人気なのが新鮮な食材を「アヒージョ」と「しょうゆ麹煮」に味付けした缶詰シリーズ「魚市場キッチン」。現在まで約2万6千個を売り上げています。「全国の人に1年を通して食べてほしい」という想いを込めながら、地元の食材を愛する料理上手な地域のお母さんたちが、一つひとつ丁寧に「おふくろの味」を作っています。
「海の幸」の美味しさへのこだわり
商品の拡大を図ろうと南三陸で獲れるウニやアワビの缶詰作りにも挑戦。「始めは食感や味など納得のいく商品ができませんでした」と会長の小山さん。どの商品も試行錯誤を繰り返し、商品化まではかなりの時間を費やしています。
今年6月、ホヤを素材にした「水煮」と「トマトソース煮」の缶詰が新たに加わりました。ホヤの養殖が盛んな志津川湾。震災以降、韓国がホヤなどの水産物の輸入規制を継続していることから、国内でのホヤの魅力を広める狙いもあり商品化。ホヤのうま味が詰まった缶詰は、ワインや日本酒はもちろん、パスタ料理との相性も抜群です。
女性活躍の場を広げ、地域に賑わいを
南三陸おふくろの味研究会の事務局を務める中村さんは、南三陸町の震災ボランティアに参加したことがきっかけで、2年前に首都圏から移住してきました。「この町に来て、三陸で獲れる魚介類は加工することでより美味しく食べられることを知りました。この美味しさを全国の皆さんに知っていただくためにも、商品ラインナップを増やしていきたいですね」と中村さん。南三陸町の「おふくろの味」をずっと残していくことに貢献したいという想いで、商品開発に励んでいます。
「地域の賑わいは女性の活躍の場を広げること。その為に、南三陸町の魅力を全国の女性に発信したい」と中村さんの熱意が伝わります。
賑わいの中心、「南三陸さんさん商店街」
「南三陸さんさん商店街」は「サンサンと輝く太陽のような笑顔とパワーに満ちた南三陸の商店街」にしたいというコンセプトのもと、震災後の2012年2月に、仮設商店街としてオープン。それから5年後の今年3月3日に、街の中心地にかさ上げされた高台に移転し、本設の商店街としてオープンしました。
「南三陸杉」をふんだんに使用した、あたたかみのある平屋6棟に、南三陸の新鮮な魚介が味わえる飲食店や土産物店など28店が入っています。地元の旬の海産物で作る「南三陸キラキラ丼」が人気を博し、全国各地から多くの人が訪れる南三陸町の復興のシンボル的存在です。
季節ごとの味が楽しめる「南三陸キラキラ丼」
「南三陸キラキラ丼」は、震災前の町おこしの一環として始まった企画です。贅沢な丼をリーズナブルに食べられると話題を呼び、今でも昼時には行列が絶えません。現在では、南三陸を代表するブランドグルメとして、南三陸キラキラ丼は全国に知られるまでになりました。
季節に合わせた4種類のラインナップが南三陸キラキラ丼の定義です。春野菜と旬の海産物をたっぷりのせた「キラキラ春つげ丼」、新鮮なウニを贅沢にのせた夏の「キラキラうに丼」、秋の魅力をふんだんに盛り付けた「キラキラ秋旨丼」、弾けるイクラが丼ぶりを覆いつくす冬の「キラキラいくら丼」として提供されます。
次の世代に希望が持てる商店街へ
現在ある商店街一帯は、町の新市街地として整備が進んでいます。今後、商店街から海へ向
けてメインストリートが通り、沿線には商業施設が整備される予定です。「南三陸志津川さんさん商店会」の阿部会長は「希望が持てる商店街にして、次の世代に渡す責任があります」、「現在の賑わいが一過性にならないよう、若い人の意見をどんどん取り入れています」と話します。
商店街では、季節に応じ、さまざまなイベントが開催されています。「これからも一丸となって賑わいを取り戻していきますので、南三陸町に遊びにきてください」と阿部会長。食欲の秋、南三陸町の美味しい魅力を堪能してみてはいかがでしようか。