枝豆を中心に異業種が繋がり、新しい町の名物を作り出す
秋田県北部に位置し、北境で青森県と接する大館市は、米代川(よねしろがわ)と長木川(ながきがわ)沿いに開けた大館盆地の中心地で、東京都渋谷駅前で飼い主を待ち続けた「忠犬ハチ公のふるさと」としても知られています。
大館市は昼夜の寒暖差が大きく、豊かな土壌に恵まれています。米の消費量が減少する中、美味しい「枝豆」を町おこしの起爆剤にできないかとの思いから、枝豆を全国に発信するべく「えだまめのまち大館」プロジェクトが始動しました。
この10年、大館市の枝豆出荷量は右肩上がり。地元の和洋菓子店が協力して作り上げた大館銘菓など、枝豆を中心に農家や工場、菓子店、飲食店、行政などさまざまな人々が関わることで「えだまめのまち大館」を盛り上げています。
初夏から晩秋まで旬が続く、甘くて栄養たっぷりの大館産枝豆
なかでも、大館産枝豆は昼夜の寒暖差が大きい夏の気候と日本三大地鶏として知られる「比内地鶏」の堆肥を活用して育ち、甘くて栄養豊富なのが特徴です。
枝豆の生産拡大を支えたのは、平成26年4月に完成した県内初の農産物流通加工センターです。枝豆の選果能力が上がり、規格外の枝豆も剥き豆やペーストなど調理食材に加工することが可能になり、無駄なく利用できるようになりました。
「えだまめのまち大館」プロジェクトが始動
大館産枝豆の生産量は順調に伸びていますが、地元での認知度はまだまだ低いのが現状だそうです。
商工会議所の塚田さんは「プロジェクトの軸は2つあります。一つは地元の人々に大館産枝豆を食べてもらう機会を増やすこと。もう一つはさまざまな加工品を開発することで枝豆に付加価値をつけることです」と語ります。
旬の大館産枝豆を地元の人にこそ、味わってもらいたい
シンプルな塩茹でがオススメの品種は、秋田オリジナルの「あきたほのか」。収穫まで時間がかかりますが、色鮮やかで粒が大きく食べ応えがあり、噛むほどにコクのある甘さと濃い味わいが楽しめます。
旬の時期、地元の人々にこそ、大館の枝豆を味わってもらいたい。そこで、市内の畑で「親子枝豆もぎとり体験会」を実施したり、地元スーパーにブースを構えて販促イベントを開催したりしています。今年の夏は、市内の飲食店と協力し、大館産枝豆のお通しと枝豆を使った各店独自の枝豆料理を提供する「えだまめフェア」を開催する予定です。
市内の和洋菓子店が協力して新しい大館銘菓を開発
特に苦労したのは枝豆の風味の活かし方です。枝豆は熱に弱く、火を加え過ぎると香りも色も飛んでしまうことから、倶楽部スイーツ代表の大塚さんは「香り豊かな大館産枝豆『あきた香り五葉』のペーストを使用し、餡に練り込むタイミングを工夫しました」と話します。
バラエティーに富むオリジナルの枝豆スイーツ
例えば、大塚さんの菓子店「大鳳堂」では、口に入れると、国産小麦を使用した自家製パンの甘みと枝豆の風味が広がり、サクッとした歯ごたえが楽しい「えだまめラスク」を販売しています。その他の店舗でも、「枝豆の焼きドーナッツ」や「枝豆と栗もちもち」などバラエティーに富んだ枝豆スイーツが登場しています。大塚さんは「各店がさらに自信や経験、技術や知識を高め、数年後には『倶楽部スイーツ第二弾』となる大館銘菓を発表したい」と意気込みます。
枝豆で街の人々が繋がり、新しいアイデアを生み出す
最近では、甘酒やジャム、糖度の低いスプレッドなど、枝豆を使ったさまざまな加工品を開発する人々も出てきました。プロジェクトでは、今後もそれらの商品を「磨き上げる」支援をして、全体的な底上げを図り、お菓子以外のカテゴリーで売れる商品を生み出そうとしています。
塚田さんは「『えだまめのまち大館』プロジェクトで会得したノウハウをモデルケースに、新たな名産品を生み出すことで、地域全体を元気にしたい」と話します。暑い日が続くこの季節、皆さんもビールを片手に大館の美味しい枝豆を味わってみてはいかがでしょうか?