「ひろば」508号 発行
2021.09.29|広報誌
特集1
脱炭素が地域経済にもたらす影響〜「負の側面」にも目配りした対策を〜
産経新聞東京本社 論説委員室 論説委員 井伊 重之氏
(本文要約)
・カーボンニュートラル政策は、温室効果ガスの排出削減や再生可能エネルギーの拡大などを通し、新たな産業の育成と雇用の創出などが期待されている。
大幅な脱炭素化のセオリーは、「需要の電化×電源の低炭素化」である。
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大幅な脱炭素化のセオリーは、「需要の電化×電源の低炭素化」である。
・一方で、化石燃料の使用を抑えるこの取り組みは、社会全体に厳しいエネルギー転換を迫るもので、各方面に様々な影響をもたらすことは避けられない。
・特に生活や産業に化石燃料を使用している地域経済にとって、この取り組みは大きな負担を強いられる。そこで、社会的な亀裂を回避するため、円滑な移行を促す「ジャスト・トランジション(公正な移行)」という考え方が必要だ。
・再生エネは、発電量が天候などに左右される。他国に比べて日本はエネルギー輸入に依存しているという弱点があり、政府はこれを認識し、脱炭素化のみではなく電力の安定供給にも責務を負っている点を忘れてはならない。
・政府は、脱炭素化の目標を示した以上、その実現に向けた工程も明確に提示し、国民や産業界の理解を得る努力を忘れてはならない。脱炭素化の「負の側面」にも配慮し、対策を講じていく必要がある。
特集2
・東京電力福島第一原子力発電所の事故から10年以上が経過したが、風評被害は、さまざまな局面で今も懸念されている。広く一般の人々に、福島についての正確な事実が共有されていないというのが現状。今後、いかにイメージを回復するかが重要だが、そこには三つの壁がある。
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・一つ目の壁は「過剰な政治問題化」。福島の問題を語ろうとすると、「原発推進派か反対派か」というように二項対立の問題=政治的な話にされてしまう。その地域で暮らす人たちが生活をどうするか考えていくことが大事。
・二つ目の壁は「過剰な科学問題化」。どうしてもセシウム、ベクレル、といった科学者でないと分からないような難しい話に巻き込まれてしまう。
・三つ目は「ネガティブなイメージ化」。ネガティブなデマ情報が流され続け、福島の話を語りにくくなっている。
・必要なのは、「福島県の状況に関する正確なデータと、その背景を誠実に直視し、それを分かりやすく語り、伝えていくこと」。福島が歩んできた状況を知ってもらうことが、これからも続く福島の復興につながっていく。
放射線のおはなし
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)
東北放射線科学センター 理事長 宍戸 文男氏
エネルギーを学ぶ・伝える・考える
以上