「ひろば」520号 発行
2023.09.25|広報誌
特集
地球が直面するトリレンマ
国立研究開発法人 海洋研究開発機構
海洋機能利用部門 部門長 大河内 直彦氏
(本文要約)
・地球の人口は2022 年11月に80億人を突破した。この2000 年の間におよそ50倍に膨張したことになる。特に20世紀半ば以降の伸びは著しく、過去80年ほどの間におよそ3倍あまりになった。
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・生き物同士は「食う-食われる」という食物連鎖を通して、ほかの生き物へとエネルギーが受け渡されていく。この食物連鎖からみた地球の定員はおよそ80億人と計算され、人間はすでに定員に達していることになる。
・人間だけがなぜ未曾有の人口増を成し遂げたのか。それは農耕という抜け道を発明したからだ。農耕とは、特定の土地に降り注ぐ太陽エネルギーを独占するシステムのことであり、これによって、人類は「生態系の束縛条件」から抜け駆けすることができた。
・その後、人類は化石エネルギーに目をつけ、産業革命以降、その利用は瞬く間に世界中に広がった。増え続ける人々の食欲を満たすために、大量の窒素肥料を合成して農業生産性を高め、エネルギー需要は増え続けた。
・地球全体で考えると、食糧・環境(地球温暖化を含む)・エネルギーという人類にとっての三つの課題が三竦みの状態、つまり「トリレンマ」に陥っている。これらの問題を一気に解決する処方箋はない。小さな一歩を一つずつ重ねていくことが、唯一無二の解法である。
放射線のおはなし
X線CTの原理についての話
東北放射線科学センター 理事 石井 慶造氏
せとふみのereport プラス
エネルギーミックスを支える現場から―技術者たちの思い―~東北電力株式会社 女川原子力発電所~サイエンスライター 瀬戸 文美氏
・東北電力女川原子力発電所は、東日本大震災で震源に最も近い原子力発電所だったが、震度6弱の揺れと約13mの高さの津波に耐え、3基の原子炉はすべて設計どおりに自動停止した。2013年に新規制基準が設けられ、原子力発電所の再稼働には厳しい安全対策基準を満たすことが求められるようになった。
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・現在、女川原子力発電所は2023年11⽉の安全対策⼯事完了と2024年2月の再稼働を目標に取り組みが進められている。とくに敷地内への津波の直接的な流入を防止するための総延長約800m・海抜29mの防潮堤が設置されたことは、女川原子力発電所の最大の特徴となっている。
・今回、話を伺った保全部・原⼦炉グループの久保亮介さんは、炉心損傷などで原子炉格納容器内の圧力が上昇した際の対策として設置されているフィルタ付格納容器ベント装置を担当している。万が一の際には放射性物質の放出量を1000分の1以下まで大幅に抑制できる。
・「電力を安価に安定的に皆さまに届けることができ、地球環境問題にも貢献できることが原子力の理想的な姿と考えている。今後も原子力の安全に携わっていきたい」と、久保さんは仕事への想いを語った。
教えて!坪倉先生 気になる“ ほうしゃせん”
放射線被ばくは遺伝するの? ―その1―
福島県立医科大学 医学部放射線健康管理学講座 主任教授 坪倉 正治氏