「ひろば」522号 発行
2024.01.25|広報誌
特集
COP28と2024年の日本のエネルギー政策の課題
東京大学 公共政策大学院 特任教授 有馬 純
(本文要約)
・COP28で採択された文書では「世界全体の温室効果ガス(GHG)排出量を2030年までに43%、2035年までに60%削減し、2050年までに正味の二酸化炭素排出量ゼロを達成する必要があることを認識する」とされた。
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・欧米諸国などは「1.5℃目標を達成するためには化石燃料の段階的撤廃(フェーズアウト)が不可欠」と主張したが、この論は8割を化石燃料に依存する世界のエネルギー供給の現実を無視しているとしか思えない。これに強く反発するOPEC、中東産油国はロシアとの連携を強め、欧米諸国に対する不信感を強めた可能性は大きい。
・また野心的な緩和目標やエネルギー転換目標は、巨額な資金ニーズと表裏一体であることを忘れてはならない。1.5℃目標に必要な排出経路やエネルギー転換を実現するためには巨額な請求書が回ってくるということであり、これらの金額が動員されなければ、途上国の排出削減は期待できないということだ。
・世界のCO2排出量は、2021年、2022年、2023年と3年連続で最高値を更新し続けている。率直にいえば、1.5℃目標は実質的に「死んだ」に等しい。2030年43%減(2019年比)が不可能なことは誰の目にも明らかになってくるだろう。
・今、化石燃料価格の上昇と円安の進行はただでさえ主要国中最も高い日本のエネルギーコストをさらに引き上げ、日本経済の大きな重荷になっている。日本がこうしたエネルギー危機に対処しながら、さらなるGHG削減を進めるためには原子力の活用が不可欠であることは論理的に考えれば自明である。まずは迅速な再稼働が喫緊の課題である。
せとふみのereport プラス
エネルギーミックスを支える現場から―技術者たちの思い―~日本原燃株式会社 再処理事業所 再処理工場~サイエンスライター 瀬戸 文美氏
・日本では原子力発電の燃料となる天然ウランはすべて輸入に頼っているが、使い終えた燃料を国内で再び発電に使えるように再処理し「準国産エネルギー資源」として再利用することで、エネルギーの長期的な安定供給が可能になる。これは「原子燃料サイクル」と呼ばれ、日本原燃の各種施設が青森県六ヶ所村に建設されている。
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・原子燃料サイクルの中でも「準国産エネルギー資源」の実現に重要となるのが、使用済燃料から再利用可能な物質を取り出すとともに、その過程で発生する高レベル放射性廃棄物を安定して貯蔵・処分可能な形にする「再処理工場」で、2024年度上期のできるだけ早期のしゅん工を目指している。
・今回お話を伺った再処理工場の電気保全部・電気保全課の阿部愛深さんは、非常用電源建屋の電気設備にかかる保修・保守や改造工事、点検などの工事監理員として、主に協力会社との作業工程の調整や作業内容の確認を担っている。
・原子力発電を通じたエネルギーの安定供給と資源の持続可能な活用という、エネルギーの未来のための取り組みを目指し、「これからもさまざまな工事や作業を担当しながらコミュニケーションと段取り力を上げて、信頼される人材になりたい」と阿部さんは仕事への想いを語った。
放射線のおはなし
がん抑制遺伝子「BRCA1/2」の変異による発がんとがん治療 東北放射線科学センター 理事長 宍戸 文男氏
教えて!坪倉先生 気になる“ ほうしゃせん”
内部被ばくは、どうだったの? ―その1― 福島県立医科大学 医学部放射線健康管理学講座 主任教授 坪倉 正治氏
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