「ひろば」509号 発行
2021.11.30|広報誌
特集1
トリチウム水の海洋放出決定で、あらためて考える日本漁業の存続策
北海道大学大学院水産科学研究院 准教授 佐々木 貴文氏
(本文要約)
・エネルギーと同じように国民の生活に不可欠な魚や漁業であるが、その供給体制や存続策を気にかける人はそれほど多くない。しかし、魚介類の自給率の低下、就業者の減少、漁村の高齢化などが進んでおり、漁業にも「安定性」や「持続性」が求められている。
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・日本漁業が弱体化するなか、政府から東京電力福島第一原子力発電所のトリチウム水の海洋放出「決定」が発表された。福島県では、震災からの復興途上にある漁業者や水産加工業者などへの影響が懸念されている。
・漁業現場の課題の解決には、陸域の論理で影響範囲を線引きしたりせず、漁業者や漁村の慣習を踏まえるなど、広域的かつ広範な視点からアプローチしていくことが必要だ。
・漁業者に責任を押し付けないことも重要だ。多くの場合、漁業者の言動や立場に注目しがちであるが、沿岸域での出来事のステークホルダーは、漁業者の背後にいる「多くの国民」であることを忘れてはいけない。
・日本漁業が、今以上に萎縮・疲弊することを避けるためには、漁業者が安心して操業できる環境を「具体的」に整備していく必要がある。これは、漁業を通じた食料安全保障の問題であり、国民全体の問題として、漁業の安定性や持続性を担保する施策が待たれている。
せとふみのereport
「低炭素を目指して」 CO₂ 低減技術IGCC(石炭ガス化複合発電)
サイエンスライター 瀬戸 文美氏
・IGCCとは石炭ガス化複合発電のこと。石炭から得られる熱エネルギーを無駄にせず活用することで、最新鋭の従来型石炭火力発電でも42%であった熱効率を、48%という高い水準まで引き上げることに成功。これにより、二酸化炭素の排出量を15%も削減できる。
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・IGCCでは、従来の石炭火力発電所では熱効率が低下するため使用できなかった「融点が低い石炭」も活用することができ、さらに燃焼時に発生する硫黄酸化物などの大気汚染物質を取り除きやすいというメリットもある。
・福島県の浜通りは、石炭の輸入港へのアクセスが良く、発電に必要な環境・設備を隣接する他の火力発電所と共用でき、東日本大震災で打撃を受けた地方の雇用と経済効果を創出する「福島復興電源」としての役割が期待され、IGCCの建設地に選ばれた。
・脱炭素が叫ばれている今、太陽光などの再生可能エネルギーは増やす方向にあるが、それだけで電力の安定供給は難しい。日本のような資源の少ない国で再生可能エネルギーを増やしていくためには、ベース電源の一つとしてIGCCを視野に入れるべきだ。
・石炭を効率よく、かつ環境にできるだけ負荷をかけない形で利用するIGCCは、日本だけではなく世界全体を見渡した時に重要な技術だ。IGCCの技術がより広まっていくことを期待したい。
放射線のおはなし
身の回りの放射性物質 カリウム40の環境への影響
東北放射線科学センター 理事 石井 慶造氏
(お詫びと訂正)
本文の内容に一部誤りがありました。正しくは以下のとおりです。
お詫びし訂正いたします。
[24ページ] 2段
23行目 | 0.0062 | → | 0.0000062 mSv/Bq | 26行目 | 0.12 | → | 0.00012 mSv | 27行目 | 0.0062 | → | 0.0000062 mSv/Bq |
[25ページ] 1段
3行目 | 0.013 | → | 0.000013 mSv/Bq | 9行目 | 0.13 | → | 0.00013 mSv | 10行目 | 0.013 | → | 0.000013 mSv/Bq |
エネルギーを学ぶ・伝える・考える
新潟市立真砂小学校(新潟県新潟市)岡本 泰子氏 、小林 泉氏
以上