東北エネルギー懇談会

ひろば519号|特集 <要約版>

福島の処理水放出〜情報を読み解くヒント〜
工房YOIKA代表 元読売新聞東京本社・論説委員 井川陽次郎

・東京電力福島第一原子力発電所に保管されてきた処理水は、1000基を超える巨大貯水タンクに貯蔵され、広大な敷地を埋め尽くしている。なお増えれば肝心の廃炉作業を妨げかねない状況となっている。海洋放出は大きな一歩だが、懸念されるのは国内外からの妨害工作、とりわけ観光や農水産物に悪影響を及ぼす風評「加害」だ。

 

・メディアによる風評「加害」を食い止めるために、まず多くの人に基礎知識を身につけてほしい。覚えておくべきポイントはそう多くない。東京電力が用意している特設サイト「ALPS処理水についてお伝えしたいこと」の18枚のイラスト図解は、最もシンプルにまとめられている。

 

・たとえば海洋放出する処理水のトリチウム濃度は、国の基準の40分の1、世界保健機関(WHO)の飲料水基準の7分の1とする方針であること。年間のトリチウム排出量は韓国の古里原子力発電所から91兆ベクレル、中国の秦山第三原子力発電所から124兆ベクレルであるのに対し、福島からは22兆ベクレルであること。

 

・さらに計画的に海水や魚などを測定・分析し、すべての分析結果をWEB上で公開していること。安全性については国際原子力機関(IAEA)や世界各国の専門家に確認してもらっており、処理水を加えた海水で魚や貝を飼育してWEB公開していると結んでいる。

 

・浄化が十分でないまま海洋放出されるかのような報道や活動団体の発信を見かけたら、「トリチウム以外は除去」というイラスト図解をつけてSNSなどで発信すればいい。残念ながら、国内外のメディアの対応に十分注意するしかない。これまで、どんな報道をしてきたのか、経緯について十分に勉強しているか、そして事実に基づく報道か、しっかりと見極めていきたい。

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