歴史から考える日本のエネルギー問題
〜エネルギー危機と日本〜
ユニバーサルエネルギー研究所 金田 武司氏
・世界はエネルギー危機に直面している。エネルギー資源のない日本にとって、その調達手段がなくなることは国の存続に関わる深刻な事態に陥る可能性があると、歴史は教えてくれる。今回は、今世界で起きていることを日本の歴史と照らし、あらためて日本の特殊なエネルギー事情と先人たちの取り組みを考える。
・欧州発の急激なガス需要増によるガス価格の高騰は、どのように世界に波及していったのか。最大の要因として、欧州各国は電力・ガス市場の自由化と固定的な価格(長期契約)が相容れないものと考え、長期契約を次々と解消したことが挙げられる。ガス、電力の急騰は欧州のエネルギー需給ひっ迫が引き金となり、さらにはロシアのウクライナ侵攻の影響も加わった。エネルギー資源は世界を廻る商材であるため、波及は瞬間的に全世界に及んだ。
・ここ数年、日本では毎年冬に電力危機が叫ばれるようになった。今年は夏も「電力需給ひっ迫注意報」など耳慣れない言葉が報道されている。日本はこれまで原子力発電、安価で大量の燃料貯蔵が可能な石炭火力発電、環境にやさしくCO₂排出の少ない天然ガス火力発電をベース電源として電力の安定供給を支えていた。しかしこれらの利用を止め、不安定な再エネに依存するという段階で電力ひっ迫は予想できただろう。
・エネルギー資源のない日本は幾度も危機的状況を経験してきた。特に1970年代のオイルショックは、当時エネルギー調達を中東のみに依存していた我が国に大きな経済的ダメージを与えた。これを教訓に日本は石油資源を備蓄し、海外への資源依存を減らし、安定的な電源確保のため原子力を積極的に推進した。また、世界に先駆けて再エネ開発も進めると共に省エネルギー産業を生み出した。
・現状、再エネの出力調整には長期貯蔵が不可能なLNG火力発電に頼るほかなく、LNGのみに依存することはリスクが高い。日本は、送電線が接続され各国間で電力を大規模に融通しあえる欧州諸国とは事情が異なる。今、無資源国日本の特殊性を踏まえ、エネルギー政策をまた一から考えるべき時期が来ている。海外への依存を減らし、燃料貯蔵が可能でCO₂削減に効果的な原子力発電の推進を積極的に進めるべきではないか。