東北エネルギー懇談会

ひろば518号|特集 <要約版>

電気料金高騰の背景と今後の見通し
常葉大学 名誉教授 NPO法人国際環境経済研究所副理事長兼所長 山本 隆三

・世界一の化石燃料輸出国・ロシアによるウクライナ侵攻は、エネルギー価格の上昇を通し世界中で物価上昇を引き起こし、各国にエネルギーの重要性をあらためて認識させた。加えて主要国のエネルギー安全保障に関する考えを根底から覆し、新たなエネルギー政策の構築を迫ることになった。

 

・欧州においてエネルギー価格の上昇が顕著になった理由は、ロシア産の化石燃料(石油、石炭、天然ガス)に依存していたためだ。第一次石油危機の経験から世界はエネルギー源の多様化を進めたが、その結果、中東諸国に代わりロシアへの依存度を高めてしまった。また、ドイツによる海底パイプライン建設と欧州主要国の脱炭素の取り組み、加えてコロナ禍がロシアの立場をさらに強固にした。

 

・今回の戦争で、ロシア産の化石燃料への依存はリスクが高いと学んだ主要国は、エネルギー政策を供給源の多様化から自給率向上へと変化させた。EUでは再エネの拡充、原子力の活用による脱ロシアとエネルギー自給率向上、脱炭素を目指すが、短期的にはロシア以外の産出国から化石燃料を購入するため、一部の化石燃料の調達で競合する可能性が高い日本への影響も続くと予想される。

 

・主要国の中でエネルギー自給率が最も低い日本にとっては、自給率の向上は大きな課題だが、同時にエネルギー価格引き下げと脱炭素という課題にも対処する必要がある。脱炭素のために再エネは重要だが、同時に自給率、安定供給と電気料金の観点からは既存原発の再稼働を急ぐことが必須だろう。

 

・経済成長のためには競争力のある電気料金は重要だ。日本経済復活や働く人たちの給与引き上げのカギの一つは、競争力のあるエネルギー価格にある。今は国民も産業も競争力のある電気料金を享受できるかどうかの正念場にある。

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