東北エネルギー懇談会

ひろば522号|特集 <要約版>

COP28と2024年の日本のエネルギー政策の課題
東京大学公共政策大学院特任教授 有馬 純 氏

・COP28で採択された文書では「世界全体の温室効果ガス(GHG)排出量を2030年までに43%、2035年までに60%削減し、2050年までに正味の二酸化炭素排出量ゼロを達成する必要があることを認識する」とされた。

 

・欧米諸国などは「1.5℃目標を達成するためには化石燃料の段階的撤廃(フェーズアウト)が不可欠」と主張したが、この論は8割を化石燃料に依存する世界のエネルギー供給の現実を無視しているとしか思えない。これに強く反発するOPEC、中東産油国はロシアとの連携を強め、欧米諸国に対する不信感を強めた可能性は大きい。

 

・また野心的な緩和目標やエネルギー転換目標は、巨額な資金ニーズと表裏一体であることを忘れてはならない。1.5℃目標に必要な排出経路やエネルギー転換を実現するためには巨額な請求書が回ってくるということであり、これらの金額が動員されなければ、途上国の排出削減は期待できないということだ。

 

・世界のCO2排出量は、2021年、2022年、2023年と3年連続で最高値を更新し続けている。率直にいえば、1.5℃目標は実質的に「死んだ」に等しい。2030年43%減(2019年比)が不可能なことは誰の目にも明らかになってくるだろう。

 

・今、化石燃料価格の上昇と円安の進行はただでさえ主要国中最も高い日本のエネルギーコストをさらに引き上げ、日本経済の大きな重荷になっている。日本がこうしたエネルギー危機に対処しながら、さらなるGHG削減を進めるためには原子力の活用が不可欠であることは論理的に考えれば自明である。まずは迅速な再稼働が喫緊の課題である。

 

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