エネルギーミックスを支える現場から―技術者たちの思い―
~国立研究開発法人 産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)~
サイエンスライター 瀬戸 文美氏
・国立研究開発法人 産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)は、政府の東日本大震災からの復興の基本方針を受け、産総研の新たな研究開発拠点として2014年4月に福島県郡山市に開所した、わが国唯一の再生可能エネルギー(以下、再エネ)に特化した国立研究機関です。広大な敷地内に再エネに関する研究・実験施設と実証フィールドが設置されており、社会実装に向けた研究開発が行われている。
・FREAでは被災地企業に対して企業が有する再エネに関連した技術やノウハウの事業化を支援している。これまで多くの課題について事業化され、非常に高い事業化率を達成している、と所長の古谷博秀さんは説明する。また、福島県では2040年までに消費エネルギーと同等の再エネを生み出すことを目指しているが、その設備の運用保守技術者は世界から必要とされているので、ぜひ若い人たちに参加してもらいたいと語る。
・FREAを拠点に風力発電にかかわる専門的な研究を行う再生可能エネルギー研究センターに所属する研究員の久保徳嗣さんは、風力発電の要である風車の羽根、ブレードと呼ばれる部分の性能向上に関する研究を行っている。福島県の技術を有する企業と連携協力しながら、新しい原理や効果を発見し、新しいデバイスを開発して実際に風車に搭載できたときの達成感を分かち合えるのはうれしい、と語った。
・同じく研究員の粟飯原(あいはら)あやさんは、FREAに日本で初めて導入され、世界にも16台しかないという回転式のレインエロージョン試験装置を使って、雨天時に風車のブレードに雨粒がぶつかると衝撃が発生し損傷が生じるという課題に取り組んでいる。実験と解析を重ね、将来的には試験装置を使った実験結果から実機の風車ブレードで長期間の評価をできるようにしたい、と話した。
・今、福島県阿武隈地域では完成すれば国内最大規模となる陸上風力発電施設の建設が進められている。これから風力の大量導入を支える技術を確立することが重要であるとされている中で、国研であるFREAへの期待も高く、若い研究者2人は地域と世界を相手にした国際連携と、幅広いフィールドで活躍することを期待されている。