2025年7月31日、「親子で学ぶ!エネルギー見学バスツアー」(東北エネルギー懇談会主催)が開催されました。
雲一つない夏空が広がった朝、宮城・福島から5組の親子がJR郡山駅に集合。発電施設の見学を通してエネルギーについて理解を深めるツアーに出発です!
大型バスに乗り込み、目指すは奥会津方面。磐越自動車道を西へ西へ、右手に雄々しい磐梯山、左手に猪苗代湖を望みつつ濃い緑の中を走り抜けます。会津坂下ICから国道252号に入ると、只見川と鉄道ファンに名高いJR只見線に寄り添う絶景の連続。車内では事前に配布された学習BOOKやDVDを見ながら、エネルギーについて次のようなことを学びました。
- 日本のエネルギー事情は
どうなっている? - ・エネルギー自給率は12.6%(2022年度)と、他国と比べても非常に低い水準にある
- ・日本の電気の約7割は火力発電で作られており、燃料(石炭・石油・LNG)は主に輸入に頼っている
- 日本のエネルギー自給率を
上げるためには? - ・温室効果ガス(CO2など)を排出せず、自然の力を活用した再生可能エネルギー(再エネ)が注目されている
- ・太陽光や風力発電は導入が進んでいるが、天候に左右されやすく、安定供給が難しい
- ・電気は発電する量と使用する量を同じにする必要があるため、発電量を調整するためにも火力発電が必要
- ・原子力発電は使用済み燃料の再利用が可能で、長期的に活用できるため「準国産エネルギー」と呼ばれる
- エネルギーミックスとは?
- ・発電方法にはそれぞれメリットとデメリットがある
- ・一つの方法に偏らず、複数の発電方法をバランスよく組み合わせる「エネルギーミックス」の考え方が重要
- ※1・・・出典:資源エネルギー庁「日本のエネルギー2024」をもとに作成
- ※2・・・出典:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計(2025年4月25日)」をもとに作成
▼DVDの内容はこちらからご覧いただけます▼
みんなでエネルギーを考えよう(東北エネルギー懇談会)
エネルギーアカデミー[探究篇~私の考える日本のエネルギー~](電気事業連合会)
「最近よく耳にする再生可能エネルギーには、いろいろな種類があるんだね」「太陽光はなんとなく分かるけど…その他はどうやって発電するんだろう?」と疑問が湧いてきたところで到着したのは、福島県金山町にある「東北電力奥会津水力館 みお里」。
2020年にオープンした新しい施設。中へ入ると木の優しい香りに包まれ、ラウンジから雄大な只見川の眺めが!大きな窓全体が季節の風景を映し出すスクリーンのようです。
「川がキラキラしてる!」「カヌーに乗ってる人がいるよ、気持ち良さそう!」と子どもたちも目を輝かせます。
初めに、シアターホールで、大型ディスプレイ映像による水力発電の仕組みや奥会津の美しい自然と人との暮らしを学習。水力発電は、高い位置にある水を低い位置に落とす際のエネルギーで水車を回し、その回転を電気エネルギーに変換する仕組みです。全長145キロの只見川には東北電力の水力発電所が大小7つあり、東北電力の水力発電総出力の約3割を占めているとのこと。奥会津地域が全国でも有数の水力電源地帯であることが分かりました。
次にギャラリーを見学。12人の作家がそれぞれの手法で只見川の魅力や暮らし、水力発電を表現した作品が展示されています。地元のスギ材でできたベンチに腰を掛けて「体感アートだね!」と話したり、幅7メートルものステンドグラスから差し込む美しい光に見入ったり。東北電力初代会長・白洲次郎氏に関する資料や、模型などを使って体感的に水力発電を学べるコーナーもありました。
再びバスに乗り、今度はカーブと勾配の続く道をずんずんと山奥へ進み……ポツンと一軒たたずむ「西山温泉山村公園 せいざん荘」(柳津町)へ。山あいにある施設ですが、お食事処に加え温泉もあって地元の方々から愛されているスポット。
昼食は自慢の香り高い十割そばとソースカツ丼のセットを食べました。ソースカツ丼は会津の名物で、中でも柳津地区ではトンカツの下に卵焼きを敷くのが特徴です。
朝早く出発し、たくさん学んでお腹ペコペコの皆さん、しっかり平らげました!
お腹が満たされたところで、せいざん荘からほど近い「東北自然エネルギー株式会社 柳津西山地熱発電所」へ。再生可能エネルギーの一つ、地熱発電を学びます。
まず「PR館」でガイドの方から地熱発電の仕組みを教わりました。
このあたりは少し掘れば湧き出るほど温泉が豊富。太古の昔は火山活動が活発だった一帯です。地下1500~2600メートルほど掘り、マグマだまりで高温になった蒸気(200~300℃)を汲み出し、その蒸気でタービンを回して発電します。蒸気と分離された熱水は冷却塔で冷やしてまた地中へ戻されます。
地熱発電のメリットは天候の影響を受けにくく安定的に発電でき、CO2排出量も少なく環境への負荷が少ないこと。火力発電と似た仕組みながら、ボイラーが不要なので無人で稼働できることも利点です。一方で定期的に大規模な機械のメンテナンスが必要。「温泉と同じく湯の花のようなものが機械につくので、点検整備を行います」という説明に、一同「なるほど!」「大自然の神秘だね」と大きくうなずきます。
館内の展示を見学後、いよいよ発電所の内部へ。
タービンと発電機のある「タービンフロア」は、巨大な空間。「なんでこんなに広いの?」という疑問に、「4年に一度、あの大きな機械をクレーンで分解し点検を行います。そのためにこれだけの広さと天井の高さが必要なんだよ」とガイドの方が説明してくれました。
「温泉みたいな匂いがする…」と誰かがつぶやくと、「正解!このあたりには温泉と同じ成分が漂っていますよ」。
自分たちの体ほどもある大きさの部品を見て興奮気味の子どもたち。写真を撮ったりパネルの説明をじっくり読んだりと、知的好奇心がグッと刺激されたよう。
見学の帰り道、バスの車窓から山の中に伸びる大きなパイプが見えました。これは、地下から出た蒸気を運ぶためのもので、地熱発電所の設備のスケールの大きさに驚かされました。
一日の締めくくりは「大いなる智恵を授かる」と信仰を集める「福満虚空藏菩薩 霊巌山 圓藏寺(会津柳津虚空蔵尊)」へお参り。断崖絶壁の上に立つ本堂の前で静かに手を合わせ、「願いが叶う」とされる「撫で牛」をなで、悠々と流れる只見川の景色にうっとり。門前町で名物・あわまんじゅうを食べたり、「柳津うぐい」の生息地である国の天然記念物「魚渕」でエサをあげたりして観光も満喫しました。
帰りのバスが発車すると、2022年に豪雨被害から11年ぶりに復活し、1日に数本しか走っていない、JR只見線車両と遭遇する奇跡的な幸運が!最後まで笑顔の絶えないツアーでした。



