我が国のエネルギーを考える場合には、「安全性」(Safety)を前提とした上で、「安定供給」(Energy Security)、「経済効率性」(Economic Efficiency)、そして「環境への適合」(Environment)についてバランスよく実現を図る「S+3E」が必要とされています。その中でも「安定供給」は、我が国の安全保障にも直結するものとして、第一に掲げられている重要なものとなります。
しかし、その重要な日本のエネルギー安全保障の現状は、下図に示すように弱点だらけなのです。つまり、日本は、エネルギーの安定確保の点では、孤立した国であり、その改善についても困難な環境にある、との極めて厳しい認識から始めなければならないのです。
我が国の原油調達は中東への依存度が高く、ホルムズ海峡・マラッカ海峡 等を通過して輸入していますが、過去には供給途絶事例も継続的にあって常にリスクが存在しています(下表に具体例を記載)。
当懇談会の「ひろば」にも、安全保障に触れるものは多いのですが、その中から4冊を紹介します。
①は、今後の「第4次産業革命」の時代に、現在の脆弱な電力環境のままで良いのだろうかという問いかけ、
②は、今やエネルギー自給率が90%を超える米国から見た、中東地域を巡る行動の変化を注視しておく必要がある、という認識です(なお、中東石油の輸出先の変化や6万人以上の米国兵士が中東で死傷していること(2014年当時で)、石油価格の数倍の防衛費が必要とも言われていること等は重要な指摘です)。
③は、欧州からの視点として、1973年の石油危機を契機にエネルギー自給は国の独立性に直結するとの危機感から原子力に邁進したフランス、そして原子力、風力発電などと真剣に向き合い、政治的な問題を解決しているスウェーデンの紹介です。
④は、安全保障とは、「国民自決権」(国民主権)として自分のことは自分で決められる体制のことであり、国として守り抜かなければならないものとの主張で、興味深い内容となっています。
また、国(資源エネルギー庁)や電気事業連合会の様々な視点からの資料がありますので紹介します。
⑤⑥は、国の安全保障の一翼を担うべき「原子力の本質的な意味や戦略性」を考える必要があることが示唆され、⑦~⑬は、歴史からの教訓、現状理解のための各種資料です。
⑭は、国際石油開発帝石(INPEX)がオーストラリアで開発している「イクシス」です。日本企業の権益が71.4%と日本主導の大型プロジェクト(2017年度輸入8,400万トンの約1割強に当たる890万トンを輸入予定)であり、初めてメジャーの仲間入りを果たしました。
⑮は、安定供給について、分かりやすく説明されています。
※スペコンとは:「資源エネルギー庁のスペシャルコンテンツ」の略。以下同じ