東北エネルギー懇談会

お知らせ

「ひろば」524号 発行

2024.05.27|広報誌

特集

エネルギーを巡る新情勢と原子力の価値
東京大学 大学院工学系研究科 教授 小宮山 涼一氏

(本文要約)

・脱炭素化に向けた対策においてあらゆる技術の活用が求められる中で、いま原子力は脱炭素化やエネルギー安定供給の上での重要なオプションとして国際的に再評価されている。IEAによる2050年ネットゼロシナリオでは、原子力発電量は約6兆kWhと、2倍(2022年比)まで増加し、太陽光や風力発電とともに世界の脱炭素化を支える役割を担うと予測されている。

 

・脱炭素化に加え、経済成長の実現には安価でクリーンなエネルギーの確保が重要だが、CO2排出ゼロ、少量の燃料で極めて大きいエネルギーを長期間安定供給できる原子力発電は多くの要件に寄与しうる技術である。ただし福島第一原子力発電所事故を踏まえた社会からの信頼回復など、ステークホルダーを挙げての課題解決への努力を期待したい。

 

・その中で、安全面や経済面などでの性能を高めた「次世代革新炉」への関心が国際的に高まっている。全般的特徴として、自然災害に対する強靭化、シビアアクシデントへの対策強化、再エネ出力変動への対応などが挙げられる。今後、技術の実証、経済性の確認、革新炉の安全性を反映した規制基準の検討なども必要となる。

 

・AIなど社会で流通するデータとその情報処理量の増加や半導体工場の新増設を背景に、内外において電力需要が増加する可能性が指摘され始めている。いまコスト低下が進んだ再エネへの関心が国際的に高まっているが、発電コストに加え、送配電に要するコストなど電力システム全体でのコスト評価を客観的に考える必要がある。

 

・日本の太陽光発電は世界第3位の導入量を誇るが、太陽電池の国内出荷量は約8割から9割を海外生産品が占めており技術自給率は必ずしも高いとはいえない。一方、原子力発電はほぼ国産技術であり、自国の技術で自国のエネルギー自給率の向上に貢献する。雇用確保や世界で技術をリードできる環境をもたらし、多様な便益が期待できる。
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せとふみのereport プラス

エネルギーミックスを支える現場から―技術者たちの思い―~量子科学技術研究開発機構(QST)六ヶ所フュージョンエネルギー研究所~

・量子科学技術研究開発機構 六ヶ所フュージョンエネルギー研究所では、「核融合」反応をエネルギー源にするための研究開発が行われている。燃料であるウランの原子核が核分裂するときに発生するエネルギーを利用して発電するのが原子力発電。これに対して核融合発電は、燃料の重水素と三重水素を超高温のプラズマ状態にして核融合反応を起こさせ、その膨大なエネルギーを利用して発電する。

 

・六ヶ所研究所では、この核融合エネルギーによる発電を実証するための原型炉の建設に必要な技術基盤を構築し、今世紀中葉には実用化することを目指して各種研究開発を行っている。

 

・六ヶ所研究所では、核融合炉のいちばん内側に設置され、膨大なエネルギーの中性子を受け止める装置「ブランケット」に使用する特殊素材の開発に向け、核融合で発生する時と同様のエネルギーを持つ中性子を発生させ、素材に衝突させるためのIFMIF(国際核融合材料照射施設)原型加速器の開発という世界プロジェクトを進めている。

 

・今回お話を伺った核融合炉材料研究開発部・IFMIF加速器施設開発グループの武石沙綾さんは、この加速器の冷却装置の維持・管理業務という重要な役割を担っている。

 

・前例がない装置の試験でマニュアルや決まった業務というのがなく、自分で考えて苦労しながら手探りで進んでいくことが多いが、グループのメンバーと協力し信頼を得て、将来的には「マルチに動ける技術者」へと成長していきたいと語った。
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放射線のおはなし

認知症の新しい治療薬と核医学診断 東北放射線科学センター 理事長 宍戸 文男氏

教えて!坪倉先生 気になる“ ほうしゃせん”

放射線被ばくで甲状腺がんが増える? ―その1― 福島県立医科大学 医学部放射線健康管理学講座 主任教授 坪倉 正治氏

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