東北エネルギー懇談会

ひろば527号|せとふみのe report <要約版>

エネルギーミックスを支える現場から―技術者たちの思い―
~3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」~
サイエンスライター 瀬戸 文美氏

・3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」は、太陽光の約10億倍も明るい放射光というX線を発生させ、物質にあててその構造や性質を観察できる。日本の技術力を結集してできたもので、軟X線では国内既存施設の約100倍の性能を誇る、と国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(QST)NanoTerasu 総括事務局長 川上伸昭さんは説明する。

 

・例えば、太陽電池やバッテリーの性能向上に寄与する新素材の研究、化石燃料の利用効率向上に寄与する触媒の研究、エネルギー消費を抑える新しい技術や材料の開発に寄与する研究など、エネルギーミックスやカーボンニュートラル実現に直接寄与する研究開発とともに、私たちの生活を大きく変えるような発見につながる可能性も有している。

 

・ナノテラス運用開始にあたり、まず10本のビームラインが整備されたが、うち3本は共用ビームラインとしてQSTが運用し、国内外の研究者が最先端の研究開発を行うために利用される。3本のうち軟X線でのナノ角度分解光電子分光を行うビームラインを担っているのが、QSTナノテラスセンター・高輝度放射光研究開発部ビームライングループの主任研究員 北村未歩さん。放射光施設の新規建設という貴重なチャンスに立ち上げから経験したいと既存施設からナノテラスに移った。2025年にユーザーに使ってもらうため、最先端の性能だけでなく使いやすさや安定性も考えた整備を行いたいと語る。

 

・10本のうち残りの7本は、光科学イノベーションセンター(PhoSIC/地域パートナー代表機関)や宮城県・仙台市や東北大学・東北経済連合会によるコアリションビームラインとして利用される。ナノテラスの放射光を産官学で広く活用するための新しい取り組みを担っているのが、PhoSIC ビームライン部の目黒晴輝さん。ここでは民間企業も課題審査不要で最短2日前の予約で実験を行うことができる。そのサポートを行いながら、放射光の驚異的な能力を多くの人に知ってもらいたい、そのためにもユーザーフレンドリーなビームラインの構築を図っていきたいと語る。

 

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