「ひろば」528号 発行
2025.01.27|広報誌
特集
2025年 日本のエネルギー政策の展望と課題
(一財)日本エネルギー経済研究所 専務理事・首席研究員 小山 堅氏
(本文要約)
・国際エネルギー情勢が不安定化する中、暮らしや経済にとって不可欠なエネルギーの安定供給確保、すなわちエネルギー安全保障の問題が一気に重要性を増し、エネルギー政策の最重要課題になった。生成AIやデータセンターの大幅拡大で電力需要が大きく増加するとの見通しが広まり、まさに電力安定供給はエネルギー安全保障の中心課題となっている。
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・2023年のCOP28では、2035年に世界の温室効果ガス排出を2019年比60%削減する必要があるとの方向性が打ち出され、世界はエネルギー安全保障と脱炭素化の両立という容易ならざる挑戦に直面する。エネルギー安全保障と脱炭素化のエネルギー転換によってエネルギーコストが上昇する場合、それを社会が十分に受け入れられるかどうかが問題になっているからである。今後は、エネルギー転換を進めつつ可能な限りエネルギーコストの上昇を抑制することが重要になる。
・さらに世界はもう一つ複雑な問題に直面している。米中対立に象徴される世界の分断の深刻化である。今や戦略的な資源や技術については、可能な限り国産化を進める取り組みが強化されている。再エネ・電気自動車・蓄電システムなどのクリーンエネルギー技術は、脱炭素化のエネルギー転換にとって極めて重要であるが、これらの製造能力や供給チェーン、またレアアースなど重要鉱物についても、中国の世界シェアは圧倒的に高い。エネルギー転換の進展に必要な戦略物資の経済安全保障問題が世界の重大関心事として浮上しているのである。
・2025年以降の国際情勢を左右する問題として世界が注目するのが「トランプ2.0」の影響である。トランプ大統領のエネルギー政策は、第1期政権時と同様に世界を大きく揺さぶっていくことになろう。その代表が気候変動政策であり、パリ協定から再離脱し、気候変動対策には後ろ向きになるだろう。それ以上に重要なのは、気候変動を巡る国際情勢への影響である。途上国からの米国など先進国への不満・批判が強まり、気候変動を巡る南北対立が激化したり、他方、途上国の側に立ち、独自のクリーンエネルギー投資促進を図る中国の存在感がいっそう高まることも考えられる。
・このように日本を取り巻く国際エネルギー情勢が厳しさを増している中、2024年末「第7次エネルギー基本計画(原案)」が公表された。政策の方向性としては、従来の「可能な限り原子力依存度を低減する」という方針から「原子力を最大限活用する」と大きく転換された。日本が目指す「2040年度におけるエネルギー需給の見通し」では、現行計画で低下するとしていた発電量が拡大する見通しに変わった。まさにここまで詳述してきた内外の新情勢に対応するための大きな変化である。今後「第7次エネルギー基本計画」は正式に定まり、日本はそこで示された「あるべき姿」の実現に向けて、官民の総力を挙げて取り組むことになる。
放射線のおはなし
フラッシュ放射線治療について
東北放射線科学センター 理事長 宍戸 文男氏
せとふみのereport プラス
エネルギーミックスを支える現場から―技術者たちの思い―~東北電力株式会社 能代火力発電所~
・東北電力株式会社能代火力発電所は、総出力180万kWを誇り、東北電力販売電力量の約15%相当、115億kWhを発電し、東北地区の重要なエネルギー供給拠点となっている。一方、再生可能エネルギーによる発電の不足分を担う調整電源としての役割も果たしている。低廉な亜瀝青炭を燃料に使えることが特徴で、経済性に優れた発電所である、と能代火力発電所運営企画グループ課長の安達哲也さんは説明する。
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・最新鋭の3号機は、石炭火力として世界最高水準の熱効率約46%を達成し、二酸化炭素排出量の削減に寄与している。加えて能代火力発電所ではバイオマス燃料を混焼することで、さらなる脱炭素化を進めている。木材を半炭化させたブラックペレットを燃料として用い、既存の発電設備を最大限活用しながら二酸化炭素排出量の削減を両立させることを目指している。2024年11月には、3号機でこれまでの最大となる重量比20%のブラックペレット混焼を達成した。
・さらに能代火力発電所では、バイオマス燃料の知見獲得を目的として、バイオマス原料の試験栽培にも本店火力部と連携して取り組んでいる。石炭灰を埋め立てた最終処分場の一部を活用し、ソルガムというイネ科の植物の試験栽培を進め、今年度は約800kgの収穫を達成した。また構内の遊休地を利用し、一年草だけでなく多年草の試験栽培も始めている。
・発電所全体の調整・取りまとめを行う運営企画グループの本間綾香さんは、発電所のペーパーレス化などDX推進の業務を担うとともに、バイオマス混焼や試験栽培にも積極的に関わっている。火力発電所の新しい将来を創る一員として仕事をしていることにやりがいを感じて、これからも広い視点を持って成長していきたいと語った。
教えて!坪倉先生 気になる“ ほうしゃせん”
自然界の放射線について ―その1―
福島県立医科大学 医学部放射線健康管理学講座 主任教授 坪倉 正治氏
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山形県立村山産業高等学校(山形県村山市) 野崎 修氏、廣瀬 僚太氏野 浩氏
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