今年も当会会員企業の女性社員を対象とした「エネルギーセミナー」(2回シリーズ)を開催。今回は昨年を上回る21人が参加しました。
1回目は、震災で甚大な被害を受けた女川駅前の復興状況視察と東北電力(株)女川原子力発電所の見学です。
初めに、女川駅に向かうバスの中では、東北エネルギー懇談会の相澤敏也専務理事が「昨年、タイプの異なる発電所を見学し、それぞれのメリット・デメリットをご理解いただいたうえで、なぜエネルギーを組み合わせて使うことが大事なのか、ご理解いただくようなプログラムを実施したところ好評だったため、今年も開催させていただきました。セミナーを通じて、エネルギーに関して広く深く確認いただけるような機会になれば幸いですし、日々のお仕事に役立てて頂ければ、さらに嬉しく思います」と挨拶しました。
続いて、参加者の皆さんから自己紹介をしていただきました。参加者のなかには、北海道や新潟など遠方から参加された方も。様々な分野でエネルギーに関する仕事に携わっている人も多く、「女川原子力発電所は初めてなので、楽しみに参りました」や「火力発電との違いなども見ていきたいと思います」など普段はなかなか見る機会のない原子力発電所の見学を楽しみにしている様子やご自身の仕事に役立てたいという意気込みなどが伝わってきました。
震災で甚大な被害を受けた女川町は、大きな防潮堤を築く自治体が多いなか、「どこからでも海が見える町」をコンセプトに街づくりを進めてきました。新たな女川駅から見ると、遊歩道に沿って商業施設「シーパルピア女川」や観光物産施設「ハマテラス」が続き、その先に海があります。
まず、参加者の方々は、相澤専務理事に案内されて、震災遺構である「旧女川交番」を見学しました。旧女川交番は鉄筋コンクリート造2階建て。津波の引き波で基礎部分の杭が引き抜かれ、現在の場所に横倒しになったと考えられています。鉄筋コンクリート造の建物が津波で転倒した様子を見て参加者の皆さまは、改めて津波の脅威に驚いた様子でした。
お待ちかねの昼食は、女川海の膳「ニューこのり」で、ミニ海鮮丼とミニ穴子天丼の両方を味わえる「姫花かご御膳」をいただきました。美しい盛り付けも楽しく、三陸の豊かな海の幸を堪能できてお腹いっぱいになりました。
再び、バスに乗り、女川原子力PRセンターに向かいます。PRセンターでは、震災当時の女川原子力発電所の状況や2号機の再稼働に向けての進捗状況などを学びました。2011(平成23)年3月11日、震源地から最も近かった原子力発電所である女川原子力発電所は震度6弱の強い揺れのあと、約13メートルの大津波に襲われました。しかし、1号機から3号機のすべてが安全に停止し、安定した状態が保たれました。
1号機は運転開始から年数が経過していることもあり、2018年に運転を終了し、廃炉に向けた作業が進められています。現在は2号機の再稼働に向けた取組みが進められており、安全対策工事の完了は2024年2月を目指し、2024年5月に再稼働し電気をお届けすることを予定しています。今後、2号機と3号機が稼働すれば、宮城県で使用されている電気の7割ほどを賄うことができるそうです。
次にPRセンターで女川原子力発電所1号機の1/2サイズの原子炉模型や長さ4メートルもある実物大の燃料集合体の模型などを使った説明を受け、原子力発電の仕組みを分かりやすく学びました。燃料集合体はウラン燃料を粉末にし、高温で焼き固めたペレットを束ねたもの。ペレットは1センチ程度の小さな円柱形をしていますが、たったひとつで一般家庭の約8か月分もの電気を賄うことができるそうです。
その後、発電所見学用のバスに乗りこみ、いよいよ発電所に向かいます。東北電力(株)女川原子力発電所の担当の方の案内で、バスの窓から「淡水貯水槽」や「緊急時対策建屋」、「ガスタービン発電機車」、「大容量送水ポンプ車」など様々な安全対策を見学しました。さらに、バスを降りて、高台から防潮堤や発電所建屋などを見ることができました。発電所には、地震や津波はもちろん、竜巻など様々な災害を想定して何重にも対策が行われていて、参加者は驚いた様子で説明を聞いていました。
圧巻だったのは、総延長約800メートルにも及ぶ巨大な防潮堤です。震災後、敷地前面の津波の最高水位を23.1メートルと想定し、現在の工法で対応できる最大の高さである海抜29メートルの防潮堤を建設しています。さらに、津波による漂流物から防潮堤を守る「漂流物防護工」も設置したそうです。
PRセンターに戻り、発電所の2号機内を見学する「発電所バーチャルツアー」に参加しました。VRゴーグルをつけると360度カメラで撮影された映像が広がり、まるで発電所建屋内を歩いているよう。原子炉建屋内など、普段は見ることのできない場所だけに、参加者の方々はあたりを見回しながら理解を深めていました。