第1部講話「エネルギー問題を考えるいくつかの視点について」
東北エネルギー懇談会の相澤敏也専務理事が「エネルギー問題を考えるいくつかの視点について」と題した講話を行いました。
エネルギー政策の基本となる「S+3E」の概念
まず、日本のエネルギー政策の基本となる「S+3E」の概念について説明がありました。Sとは安全性(Safety)、3Eとはエネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性の向上(Economic Efficiency)、環境の適合(Environment)を表しています。
このなかで、安全性に関しては「十分な安全性はエネルギー政策の大前提であり、特に原子力については、安全性向上に向けて、常に高みを目指す努力が重要です。また、火力や再生可能エネルギーであっても、安全性が保たれることが全ての前提です」と語り、「昨今の情勢変化や将来的なエネルギー需給を踏まえて、改めてS+3Eの在り方を再整理する必要があるのではないでしょうか」と問いかけました。
日本に適した電源のベストミックス構築の必要性
電源には火力発電(石油・石炭・天然ガス)や原子力発電、再生可能エネルギー(太陽光・風力・地熱・水力)がありますが、そのすべてにメリットとデメリットがあります。例えば、水力発電は、輸入に頼らず、発電時にCO2を出さないメリットがあるものの、国内に開発できる地点が少ないというデメリットがあります。勿論、雨の量で発電量が左右されるという制約もあります。「日本は石炭や天然ガスなどのエネルギー資源をほとんど持たない国なので、利用可能な全てのエネルギー源を活用しながら日本にとってメリットが最大であり、デメリットが最小になるような組み合わせを考えることが重要なのではないでしょうか。それを私たちは『電源のベストミックス』と呼んでいます」。そして、その「ベストミックス」は国際情勢や技術の発展などとともに変化しているそうです。
日本の太陽光導入容量は主要国で最大
驚いたのが、各国が太陽光発電をどのくらい導入しているのか、比較した経済産業省のデータです。太陽光の発電量は圧倒的な国土面積をもつ中国、アメリカに次いで3位でした。そして、国土面積あたりの太陽光設備容量はドイツを抑えてトップであり、さらに、日本の平地面積はドイツの約半分にも関わらず、平地面積あたりの太陽光設備容量はドイツの2倍以上なのだそうです。「日本は太陽光発電の導入に消極的なのではないか」というイメージを覆す結果で、「客観的なデータに基づいて考えたり、議論したりすることが必要ではないかと私自身も強く思いました」との説明がありました。
第2部テーブルトーク
2日間に渡ったエネルギーセミナーの締めくくりは、全員で経験をシェアするテーブルトークです。21人の参加者の皆さんが、施設見学や講話を聞いて感じたことや疑問に思ったことなどを、1人ずつ話していきます。
参加者のバックグラウンドは様々。女川原子力発電所や女川町の視察では、東日本大震災を思い出した方も多くいました。震災の時、福島で暮らしていた方は、10年経った今でも原子力発電所にマイナスイメージを抱いていましたが、女川原子力発電所の安全対策などを視察して、「イメージだけではなく、データをもとに考えていきたい」と思うようになったそうです。また、北陸から参加した方は、バスの中から見た女川町の住宅がどれも新しく、テレビで見ていた震災を改めて実感したことや女川原子力発電所に築かれた29メートルもの防潮堤に圧倒されたことなどを話してくれました。震災の後、「近くで暮らす住民の方々は、どうして原子力発電所の構内に逃げたのだろう」とずっと疑問に思っていた方は、発電所員が全戸訪問している様子を聞き、安全対策が地域住民に広く伝わっていたからだと納得したそうです。
一方、三居沢発電所を初めて見学する参加者も多く、「CO2を出さないクリーンな発電所だと感じた」「再生エネルギーの良さを感じましたし、正直なところ、こういう施設がもう少しあると良いなと感じた」などいう意見が出ました。さらに、相澤専務理事の講話も通して、「すべての発電方法に一長一短」があり、宮城県内の70%ほどの電気を賄える女川原子力発電所も比較的小規模な三居沢発電所も、どちらも大切であることを実感したそうです。また、再生可能エネルギーの普及を目的に始まった「再エネ賦課金」に関して「導入された時は気にしていたけれど、じわじわと上がってきたことに全く気付いていませんでした。これからも関心をもっていきたい」と話す参加者もいました。
参加者の意見を聞いた相澤敏也専務理事は最後に「エネルギーは非常に大きな話ではありますが、我々の生活のなかに直結していることなので、ぜひこれからも関心を持っていただけると嬉しく思います」と挨拶して、2回に渡るセミナーを終えました。私たちの生活に欠かせないエネルギー。皆さんも一緒に考えてみませんか?