2回目は、11月10日東北電力(株)の三居沢発電所・三居沢電気百年館の見学やエネルギー勉強会を実施しました。前日から降っていた雨もバスに乗り込む頃には止み、青空ものぞいていました。この日は、テーブルトークファシリテーター役の舟倉薫さんも同乗して仙台駅東口を出発。国がカーボンニュートラルを目指し、再生可能エネルギーへの注目が高まるなか、最初の目的地である三居沢発電所と三居沢電気百年館に向かいました。
広瀬川の河畔に位置する三居沢発電所は、全国でも珍しい市街地にある水力発電所で、日本の水力発電発祥の地として知られています。明治21(1888)年7月1日、宮城紡績会社の工場で、機械の動力となっていた水車に出力5k Wの直流発電機を取り付け、工場内の電灯50灯とアーク灯が点灯しました。東北で初めて電灯がともった瞬間です。また、発電所建屋の隣には、東北の電気誕生から100年を記念して昭和63(1988)年に建てられた「三居沢電気百年館」があります。バスを降りた参加者は、2つのグループに分かれて、発電所と百年館を見学しました。
発電所を案内してくれたのは、東北電力(株)宮城発電技術センターの志子田豊文さんです。水車発電機室は一部がガラス張りになっていて、外からも水車発電機を見学できます。水を取り込むケーシングと呼ばれるケースの中に水車があり、発電出力1,000kWの発電機を回し発電しているそうです。現在、東北電力㈱では、青森から新潟まで管内205ヶ所の水力発電所を全て、福島県会津若松市にある水力運用センターで制御していて、三居沢発電所も無人化していることを教えてもらいました。
続いて、普段入ることができない水車発電機室の中に入り、間近で水車や発電機を見学しました。この建物は、明治41年に建てられており、国の登録有形文化財として登録され、発電所関係機器ならびに資料群が日本機械学会の機械遺産や、経済産業省の近代化産業遺産群に認定されています。志子田さんによると、この日は、前日からの大雨により最大出力に近い発電量だったようです。台風などで河川水量が多すぎる場合は、設備を守るために、発電を止めなければならない時もあるというお話を、皆、興味深そうに聞いていました。室内は機械音が響いて、今も現役で活躍する発電所のエネルギーを感じることができました。
百年館の1階には、三居沢発電所の歴史を紹介する「電気百年ギャラリー」があります。案内してくれたのは、百年館運営員の佐藤昭実さん。まず、ここから2キロメートルほど離れた広瀬川上流から取水し、発電所の裏山の水槽から一気に水を落下させ、水車を回して発電する仕組みについて教えてもらいました。その落差は約27メートル。訪れた人から「どうやって水を揚げているのですか?」と聞かれることもありますが、実際には、自然の地形をうまく利用して広瀬川から裏山の水槽まで水を運んでいるそうです。
ギャラリーには、宮城紡績会社の発電機(レプリカ)や戦後フランスを代表する画家、ベルナール・ビュッフェが描いた『三居沢発電所』のリトグラフのほか、昔懐かしい電気器具なども展示されています。また、2階のベランダからは、煉瓦で造られた明治33年当時のずい道トンネル出口や今も使われている水圧鉄管などを見ることができました。アーク灯を初めて目にした近所の人たちが狐火と勘違いし、駐在さんが飛んできた逸話が紹介されるなど、佐藤さんの軽妙なトークに和やかな雰囲気で見学することができました。
記念撮影の後、バスで移動し、昼食をはさんで「エネルギー勉強会」が行われました。「講話」と「テーブルトーク」の2部構成。施設見学を踏まえ、さらにエネルギーについての理解を深めます。
参加者の主な感想はコチラ
~施設見学の感想~
- 水力発電を含め再エネのメリット・デメリットを理解した上で最適なエネルギーミックスを実現する必要があると思いました。
- 水力発電所では、近くで発電装置を見る事ができ、電気を作る流れをイメージしやすかったです。
水力発電には、ダムと隣接しているものや三居沢発電所のように流れ込み方式のものがあること、天候によって発電量が左右されてしまうこと等を非常に丁寧にご説明頂き理解が深まりました。
- 初めて三居沢発電所見学させていただき東北で初めてあかりを灯した場所として大変歴史を感じました。中でも大変印深かったのは、明治に建てられた建造物が今も使用されているということとその建物の屋根部分についている魚を模したモチーフに”火事にならないように”との願いが込められているところです。想いが今も受け継がれているところに感銘を受けました。