1回目は、普段見学することができない東北電力(株)女川原子力発電所の見学と震災で甚大な被害を受けた女川駅前の復興状況の視察です。
女川町に向かうバスの中では、昨年のエネルギーセミナー参加者からいただいたご意見を参考に作成した「エネルギーを考えるヒントBOOK『エネルギーのミカタ』」を紹介しました。エネルギー問題は難しく感じられがちですが、マンガや図解を多く使うことで、少しでも親しみを持ってもらえるよう、また、エネルギー問題を考えるきっかけとなればとの思いで作成しました。※『エネルギーのミカタ』は、東北エネルギー懇談会のホームページでもデジタルブックとして掲載されていますので、ぜひご一読ください
続いて、参加者の皆さんから自己紹介をしていただきました。今回は青森や東京など遠方から参加された方や仕事で女川原子力発電所と関わりのある方もおられました。「世界情勢により燃料が高騰している状況を目の当たりにし、いち消費者としてエネルギーについて考える機会にしたい」「普段、なかなか目にする機会のない原子力発電所の見学を楽しみにしている」などセミナーに参加する思いを知ることができました。
さらに、事前に施設見学のポイントを把握してもらうため、「女川原子力発電所の安全性向上に向けた取り組み」についてまとめたDVDをご覧いただきました。
震災で甚大な被害を受けた女川町は、防潮堤をつくらず、町全体を嵩上げすることで、新たな街づくりを進めてきました。新たな女川駅を起点に、海に向かって伸びる全長200メートルの遊歩道に沿って商業施設の「シーパルピア女川」や鮮魚や水産加工品を中心とした特産品を扱う観光物産施設「ハマテラス」があります。少し汗ばむ陽気のなか、参加者の方々は、散策マップを手にしながら、復興のシンボルでもある女川駅や震災遺構の旧女川交番を視察するなど復興し続けている女川町を散策しました。
昼食は、女川海の膳「ニューこのり」で、ミニ海鮮丼とミニ穴子天丼の両方を味わえる「姫花かご御膳」をいただきました。美しい盛り付けで、三陸の豊かな海を実感できて、大満足でした。
昼食後はいよいよ女川原子力発電所の見学です。
まず、女川原子力PRセンターでは、現在の女川原子力発電所の状況や2号機の再稼働に向けたプロセスなどを学びました。
東日本大震災の時、震源地から最も近かった女川原子力発電所は、震度6弱の強い揺れの後、約13メートルの大津波に襲われましたが、運転中の1号機と3号機、それに原子炉起動直後だった2号機のすべてが安全に停止し、今も安定した状態が保たれています。
三陸海岸は昔から大きな津波に襲われてきた歴史があります。そのため、震災以前から「想定外」の津波に備えて敷地を高くし、「万が一」に備えて約6,600カ所の耐震工事を実施していたことなどが事故防止につながったそうです。
続いてPRセンターでは、エネルギーや原子力発電について理解を深めました。館内には、1/2サイズの原子炉模型や高さ4メートルもある実物大の燃料集合体・制御棒の模型もあり、原子力発電のしくみを分かりやすく学ぶことができます。日本のエネルギー自給率は食料自給率より低い約12%しかない中で、電気を安定して届けるためには、原子力、火力、再生可能エネルギーなどをバランスよく組み合わせて発電する「エネルギーミックス」が重要だと学びました。
その後、発電所見学用のバスに乗り込み、発電所構内を巡りました。現在、東京電力福島第一原子力発電所の事故を教訓とした新規制基準に沿った安全対策が随所で進められています。巨大防潮堤の建設現場の見学では、一般的なマンションの10階建てに相当する海抜29メートルの防潮堤が800メートルに渡って続き、防潮堤の上で作業をする方々と見比べて、その高さを実感しました。
敷地の高台では、防潮堤や発電所を見渡すことができました。原子力発電所を安全に停止するためには、原子炉を「止める」「冷やす」、放射性物質を「閉じ込める」の3つが大切であり、電源と水の確保が必要不可欠です。新規制基準を満たすことはもちろん、さらなる安全性向上を目指すためにどのような備えがされているのか、東北電力(株)女川原子力発電所の担当の方に分かりやすく説明していただきました。参加者はメモを熱心に取ったり、現状についての質問をしたり積極的にエネルギー問題に向き合っていました。
PRセンターでの発電所バーチャルツアーでは、VRゴーグルをつけて建屋内を見学しました。目の前には360°カメラで撮影された映像が広がり、まるで本当にその場に自分が立っているかのような臨場感の中、2号機原子炉建屋内や安全対策工事など、なかなか見ることができない場所だけに、参加者の皆さんは興味津々でした。